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木村峻郎先生作成!法律学習用講習会レジェメ「遺言・成年後見・民事信託、どれが最適な提案か~ 税理士の判断ポイントと実務の落とし穴~」(税理士の先生方へ)民法の遺言能力の規定

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法律監修:アイランド新宿法律事務所(代表弁護士 木村 峻郎)
テーマ「遺言・成年後見・民事信託、どれが最適な提案か~税理士の判断ポイントと実務の落とし穴~」(税理士の先生方へ)
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遺言・成年後見・民事信託、どれが最適な提案か~税理士の判断ポイントと実務の落とし穴~

アイランド新宿法律事務所
弁護士 木村 峻郎

第1 遺言をめぐる近時の裁判例
  遺言をめぐる裁判の多くが「遺留分侵害」を巡るものか、「遺言者の遺言能力の有無」を巡るものである。そこで、今回は、以下、遺言能力を巡る「裁判例及びこれを踏まえた実務の応用」について説明する。

(1)民法の遺言能力の規定
遺言書を有効に作成するためには遺言能力が必要である。

民法第961条  15歳に達した者は、遺言をすることができる。
民法第963条  遺言者は、遺言をする時においてその能力(遺言能力の意)を有しなければならない。

(2)遺言能力とは?
ア)定義=遺言をすることができる能力
イ)民法や裁判例を踏まえた一応の目安
通常の15才(民法961条)の者が有する判断能力を基準に遺言能力の有無を判断する。
ウ)具体的な基準
   (長谷川式の利用)
長谷川式簡易スケール(HDS-R)
①10点以下  原則として遺言能力なし
②11~14点 遺言能力が否定される可能性あり
③15~19点 遺言能力が否定される可能性がややあり

(3)遺言能力を有しない者の具体例
①15歳未満の者(民法961条)
②長谷川式(HDS-R)のテスト(別紙参照)で「10点未満の場合は遺言能力が無い」と判断される可能性が高い。又「15点未満の場合も疑義が生じ」、裁判ではカルテ等により遺言作成時の判断能力について鑑定を行い、その有無が判断されることが多い。

そこで、クライアントから相談を受けた場合にはとりあえず医師の診察を受け「長谷川式テスト」を受けることをアドヴァイスし、その結果により遺言書を作成するか否か、対応を決定する必要がある。

(4)長谷川式以外の事情も考慮する
  ①カルテに記載された本人の判断能力に関する症状
例)問診に正確に答えているか否か
  ②投薬された認知症等の薬の種類及びその量
  ③近親者の「本人が日常生活において正常に行動していたか否か」の説明
  ④遺言の記載内容の平易さ

第2 成年後見人をめぐる近時の裁判例

①申立権者
申立権者は4親等の親族等や検察官等に限定している
(従兄弟も申立は可)

②申立から選任までの手続の流れ
    医師との面談、診断書の取得
          ↓
その他必要書類(戸籍、登記されていない旨の証明書、通帳等)を揃えて家庭裁判所に申立て
          ↓
    家庭裁判所が本人、後見人候補者との面接
          ↓
    家庭裁判所が成年後見開始決定を行う

③必要な費用と期間
  申し立て~開始決定確定までは概ね2か月程度。
  実費としては7,000円~9,000円程度。
その他戸籍謄本等の取寄せ費用。
  (判断能力の程度によって異なる。)

④誰が後見人に就任するのか
          ↓
㋑推定相続人間で後見人候補者に争いがなく(例えば後見 人を長男とする合意)、成年被後見人の流動資産額がさほど高額でない場合は、申立人が推薦した者
㋺推定相続人間で後見人候補者に争いがある場合、或いは流動資産額が一定額を超えるときは、後見制度支援信託を用いるか、裁判所の名簿に登録されている第三者(主に弁護士)を後見監督人とする場合がある。
㋩本人の身上介護が必要な場合、本人の財産が特に高額の場合等は、後見人の事務分掌が行われる場合もある。
例)
1.身上監護は親族の後見人
2.財産管理は弁護士と2人の後見人

⑤成年後見人が本人の不動産を売却する場合の留意点
後見人が成年被後見人の居住している自宅不動産、或は介護施設に入居する前に居住していた不動産を売却等しようとする場合には「家庭裁判所の許可を得なければならない」旨の制限がある。
 
⑥成年後見人の負う善管注意義務(民法869条)
例)
「要介護5の者(A)」の後見人BがAの自宅不動産を売却し、その売却代金を利用して介護施設に入所した場合、Aの死亡後Aの相続人が「売却価額が低額すぎる」と主張し、後見人Bに対し損害賠償請求をした。
   ↓
裁判所は「家庭裁判所の許可を得ている」ことを理由に後見人に過失がないと判断し、後見人Bが勝訴した。

※後見人Bが家庭裁判所の許可を得ることなく行ったA所有の財産(非居住用不動産や株式やゴルフ会員権等)の売却処分について善管注意義務違反を問われる危険性はある。

第3 民事信託
民事信託は活用され始めて間もないものであり、今後、様々な法解釈が問題となる可能性がある。
現状、民事信託に関して、問題になっている事柄の一部を取り上げる。

(1)委託者の抵抗感を巡る問題
民事信託は委託者に十分な判断能力があることを前提としてスキームを構築するものであるが、如何に受託者が親族と言えども、自己の財産が他者名義となることに抵抗感を覚える者は想像以上に多い。

事後に信託契約の解除を求められ争いが生じるケースがある
         ↓
十分に内容の説明を行い、委託者の理解と納得を得ることが必要。

(2)委託者の判断能力を巡る問題
重度の認知症を患っている親Aの不動産について、子Bを受託者とした信託制度を行わせる。
         ↓
判断能力がないため無効となり、子Bに対し他の相続人から無効の主張が為される。

(3)遺留分侵害を巡る問題
民事信託といえども、遺留分制度を潜脱することは出来ず、遺留分を侵害する民事信託については遺留分減殺請求を受けることとなる。
         ↓
民事信託を用いる場合には、遺留分を侵害しない様配慮することが必要。

(4)受託者の善管注意義務を巡る問題

受託者は信託事務を行うにあたり、原則として善管注意義務を負う(信託法第29条2項本文)。

そのため、例えば、受託者が信託財産を処分するに際して、時価よりも低額で売却した場合、善管注意義務違反による損失の填補責任を負うことがある。

信託法
(受託者の注意義務)
第29条  受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
2.  受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。


信託業法上の問題から、専門家が受託者になることはそこまで想定し難いが、受託者からクレームを受けるおそれがある。

やはり、制度内容を十分に受託者にも説明し、理解を得る必要がある。
また、特約を設けて注意義務を軽減・具体化することも検討の必要がある。

以上

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