木村峻郎弁護士作成!講演レジェメ集:

木村峻郎弁護士作成!法律学習用講義レジュメ集(労働法)会社と従業員の労務問題~従業員とのトラブル防止 その5~”賠償予定の禁止、身元保証人

木村峻郎弁護士作成!講習会レジェメ
法律監修 アイランド新宿法律事務所(代表弁護士 木村 峻郎)

テーマ”(労働法)会社と従業員の労務問題~従業員とのトラブル防止 その5 ~”
Google+同時更新,無料メルマガにて解答配信予定!

会社と従業員の労務問題
~従業員とのトラブル防止 その5~

アイランド新宿法律事務所
代表弁護士 木 村 峻 郎


第1 従業員の違法行為

1.
事例
甲会社の従業員Aは得意先である乙会社の担当者Bより要求されたリベートを支払うため、印刷代金を請求する際に「Bに支払うリベートを上乗せ」して乙会社に支払の請求をしたうえ、その支払を受けBにリベートを支払っていた。この場合の法律関係はどうなるか。

(1)民法715条の使用者責任
会社(使用者)の責任=従業員が会社の業務執行中、その故意又は、過失により第三者に損害を与えたときは、会社も従業員とともに「第三者に損害賠償責任を負担しなければならない」と規定している。
従ってAの過失により、乙会社に損害を与えてしまった場合、甲会社も責任を負担することになる。もっとも乙会社の従業員Bにも不法行為責任(民法709条)が認められ、A・Bと甲会社が連帯して損害賠償責任を負担する。

(2)賠償責任に応じた会社の求償権の行使
会社が被害者からの賠償請求に応じて、賠償金の支払をした場合、不法行為を行なった従業員に対して求償をすることができる。しかし、判例は多くの事案で会社が被害者に支払をした賠償金の全額の求償は認めていない。会社が被害者に支払をした金額の半額程度しか求償を認めていない。

(3)前記事例の概説
①事例は、Aが乙会社のBと共同して乙会社に損害を与えたことになり、A・Bは乙会社に損害賠償責任を負担することになる。そして甲会社はA会社の使用者として民法715条により、乙会社に対して損害賠償責任を負担しなければならない。
②但し、甲会社はAに対し、乙会社に支払をした損害賠償額の求償をすることが出来る。

<参考条文>
民法第715条(使用者の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2.使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3.前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


第2 従業員の違法行為


労働者に対する会社からの損害賠償請求

問)
甲会社の従業員Aは仕事中100万円の会社の商品を「停車させた自動車内に残したまま、その場を離れた」ため、その商品が盗まれてしまった。この場合、会社はAに対し100万円の損害賠償請求をすることができるか。


第3 従業員の違法行為

1.事例
甲会社のAが部下のB女に対し、仕事中「ナイスプロポーションをしているね」「今度美味しい食事を御馳走するから、楽しみにしていてね」と度々声をかけていた。この場合、Aの行為はセクハラ行為となり、AはB女に対し損害賠償責任を負担しなければならないか。又、甲会社はどうか。

2.セクハラとは「性的嫌がらせ」と言われるものであり、嫌がらせになるか否かは被害者がどの様に感じたかという基準で判断されるので、同じ行為を行なった場合でも「不愉快な思いをした」という被害者の人に対してのみセクハラ行為となる。

3.そこで、B女がAの行為について「不愉快な思いをした」というのであれば民法709条(不法行為)による賠償責任を負担する。

4.又、甲会社従業員Aの行なった行為につき、民法715条により、「使用者責任」を負担する。


第4 損害賠償の予定と身元保証人の責任

1.事例
問)
甲会社は従業員Aの入社に際し「Aが将来会社に損害を与えたときは、100万円を違約金として支払う」旨を予め約束させたうえ、Aの親Bを身元保証人とする契約を締結した。その後Aが会社の商品50万円分を盗み出した場合、甲会社はどの様な救済手段を採ることができるか?

<考え方>
甲会社は、身元保証人である、Bの責任を追及することが理論上可能であるが、本来会社は従業員を監督して業務を行わせる立場にある。そして、身元保証人Bは従業員Aが会社で仕事をする場合、親であっても監督をすることはできません。そのため、判例も身元保証人の責任を認めるにも会社側の過失を強調し、身元保証人責任については、例えば20万円とする等、身元保証人の責任を著しく軽減している。

2.賠償予定の禁止
「労働契約の不履行」により、会社に損害を与えることがある場合に備え会社と労働者との間で「予め違約金を定める」ことも少なくない。例えば事故を生じさせた労働者に対し、将来「再度事故を起こしたときは、200万円の損害金を支払う」という約束をさせることであるが、これは労働者を不当に拘束するおそれがある。そこで、この様な賠償を予定することは、禁止されている。

3.身元保証人
①身元保証とは、将来従業員Aが会社に負担するかもしれない損害賠償債務につき、従業員の「責に帰すべき事由」に基づいて発生した損害を保証すること。

②保証期間(身元保証法第2条)
イ)身元保証契約の期間は「5年」を超えることはできない。もしこれより長い期間を定めたときは、これを5年に短縮する。
ロ)身元保証契約は、これを更新することができる。但し、その期間は、更新のときより5年を超えることはできない。

③保証期間を定めないとき

イ)判例=保証契約後相当期間を経過した場合において解約予告期間を設けることを要件として、保証人は解約権を行使することができる。

ロ)従業員の資産状況が著しく悪化し、保証債務の額が契約当時予想しなかった金額に及ぶ可能性を生ずるに至った場合や、保証人の従業員に対する信頼が害されるに至った場合には、事情変更の一場合として、告知期間を要せずに解約権を有すると解されている。

④身元保証人の地位と相続
身元保証人が死亡した場合、その地位は相続人に相続されない。但し、既に従業員の違法行為が行われ、損害賠償責任が発生した場合には、身元保証人が負担した賠償責任も相続の対象となる(民法第896条)。

<参考条文>
民法第896条(相続の一般的効力)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

(PDF)
(PDF)講義レジェメ291022アイランド新宿法律事務所(木村峻郎)

その6へ続く
”(労働法)会社と従業員の労務問題~従業員とのトラブル防止~

法律監修 アイランド新宿法律事務所(代表弁護士木村峻郎)

木村峻郎先生作成、講演会・講義レジェメ集:

木村峻郎先生作成、講演会・講義レジェメ集一覧(H29):

スポンサーリンク
アーカイブ
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。